BLOG,院長の読書感想文
『五分後の世界』
あっという間に11月も後半。
あと1カ月とちょっとで今年も終わりです。
時間の流れが速く感じます。
わたくしの好きなテレビ番組の
司会をしている村上龍氏。
『五分後の世界』
幻冬舎文庫
『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界Ⅱ』
幻冬舎文庫
以前エッセイの中で
伝えたいことを小説にして表現していく、
といった内容のことを書かれていました。
そういう目で読むと
村上龍さんの小説の中にたくさんの
メッセージを感じます。
今回はパラレルワールドの物語です。
(今回といっても10年以上前の作品ですが)
パラレルワールドと言えば
(毎度になりますが)村上春樹氏の
『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』
昨年の『1Q84』が思い浮かびますが、
趣向は全く異なります。
5分ずれた世界に紛れ込んだ主人公小田切。
(『五分後の世界』)
そして続編では
まったく別の主人公、
アメリカン人ジャーナリストが
生きる世界。
(『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界Ⅱ』)
テレビ司会のとき以上に厳しいメッセージを感じます。
UG兵士の仲間のミツイが倒れた際
「悲しい悲しいと叫び大声で泣くことによってミツイが助かるならば彼らはそうするだろう。UG兵士はシンプルな原則で生きている。最優先事項を決め、すぐにできることから始め、厳密に作業を行ない、終えると次の優先事項にとりかかる。悲しい時にただ悲しい顔をしていても事態の改善はない」
そして主人公キャサリン・コウリーが述べる
「圧倒的な危機感をエネルギーに変える作業を日常的にしてきたか、を試されることになります」
UGとか兵士とかミツイとか。
これはネタばれになってしまうので
ご興味あればご一読を。
完全なSFですが、
村上龍氏の小説からもエッセイからも
強烈に感じるのはまさに
“危機感”
でもただただ“危機感”を持てばよい
というわけでもなく
“危機感”との間合いの重要性です。
この2作品がそれぞれ1994年、1996年に
発表されたというのは驚きです。
気温が下がってきました。
体調にお気をつけ下さい。
『神の子どもたちはみな踊る』
爽やかな日が続きます。
ずっとこんな天気なら良いのに、
と思うくらいです。
この連休中は運動会の音楽が
何処からともなく聞こえたりしました。
今頃から夏の疲れが出てくることがあります。
体の奥に溜まっていた錘のようなものが
表面に出てくるように。
体調にお気をつけ下さい。
で、読書の秋です。
そろそろノーベル文学賞の候補、
と言われている村上春樹氏。
今年は残念でした。
短編集です。
『神の子どもたちはみな踊る』
村上春樹 新潮文庫
わたくしが繰り返し読むのは
「タイランド」。
女性医師とガイド兼運転手ニミットとの
会話に癒されてきます。
エッセイにも書かれていますが、
孤独を愛する方ですね。
「タイランド」続いて
大変評価されている「かえるくん、東京を救う」、
「蜂蜜パイ」と続く流れ。
未来への光というか希望というか
立ち向かっていこう、というような方向へ。
強いられるほどの強引さはなく
自然と導かれる、といった感じでしょうか。
『剣客太平記』
暑さ寒さも。。。の言葉通り
清々しくなって参りました。
季節の変わり目には
くれぐれも体調にお気をつけ下さい。
さて、時代小説です。
『剣客太平記』
岡本さとる ハルキ文庫
爽やかです。
剛剣でありながら人情味のある
主人公峡竜蔵。
テンポ良く、そして実に爽やかです。
ここ数日の天気と同じくらい。
時代小説では、
やっぱり池波正太郎。
『剣客商売』や『鬼平』が
素晴らしいですね。
ちょっと前には北方謙三の
『余燼』のピリッと皮膚に刺さるような
緊張感に惹き込まれました。
今回の岡本さとる氏は
『水戸黄門』、『剣客商売』など
テレビ時代劇の脚本を手掛けた方だそうです。
納得です。
実に勧善懲悪でハッピーエンド。
気持ち良く読むことができました。
文庫書き下ろしとのことなので
続きも期待できそうです。
『人生を変えた時代小説傑作選』
あっという間に7月も終盤ですね。
熱い日が続きますが水分補給をして
体調管理にお気をつけ下さい。
『人生を変えた時代小説傑作選』
山本一力 児玉清 縄田一男
読書家としても有名だった児玉清さんが
選者の一人になっています。
菊池寛、松本清張、藤沢周平など大御所の
時代小説作家の短編が収録されています。
一番気に入ったのは
五味康祐『桜を斬る』
わたくしは基本的に、
主人公が修業して成長するような
ストーリーが好きなわけですが、
(『スラムダンク』なんてまさしく)
この小説もそういうベースがあります。
最後は意外な、というか美しいシーンが
目に浮かびます。
1954年の作品ということです。
ところで
たびたびコメントを下さる
あつたドラゴンズ様
このブログを見て頂きありがとうございます。
でも、マラソンは無理です。。。
2011.07.27|コメント(0) | 院長の読書感想文
『意味がなければスイングはない』
東海地方もやっと梅雨明けです。
最近はすっかりエッセイにはまっています。
以前書いたように
わたくしが一番好きな小説
『ノルウェイの森』の中で、
それこそ主人公のワタナベ君が
『グレート・ギャッツビー』を
繰り返し読んだように
『ノルウェイの森』を
繰り返し読んだわけですが、
最近は村上氏のエッセイを
手あたり次第読んでいます。
音楽、とりわけジャズに
造詣の深い村上氏
(小説家になる前に
ジャズバーを経営していた)
『意味がなければスイングはない』
文春文庫
『ポートレイト・イン・ジャズ』
新潮文庫
音楽についてのエッセイを
読んでいると
本当にその音楽が聴こえるように。
『走ることについて語るときに
僕の語ること』
文春文庫
マラソンはともかく体を動かそう!と
思いますが、ページをめくるばかりです。
(苦笑)
『遠い太鼓』
講談社文庫
旅行についてのエッセイを読んでいると
まるでそこで一緒に滞在しているように。
『もし僕らのことばが
ウィスキーであったなら』
新潮文庫
そして、お酒に関するエッセイを
読んでいると
本当にそのお酒を飲みたい気分になってきます。
(実際のところは弱くて
すぐに真っ赤になってしまします)
同じ日本語なのに魔法のように
心を奪われてしまいます。
どうしたらこんなにイメージがわいてくる
文章を書けるのでしょうか?
寝る前に
スタンゲッツを聴きながら
そして(文字通り)ほんの一口
アルコールでリラックスするようにしています。
2011.07.09|コメント(0) | 院長の読書感想文
『大人の流儀』
『大人の流儀』
伊集院静 講談社
伊集院氏の著作を読むのは
初めてでした。
直木賞作家で、
女優夏目雅子さんの夫だった
ということしか知りませんでした。
(最後の章で夏目雅子さんについて
書かれています。)
普段手に取るのは
小説ばかりですが、
(自己啓発本もここ数年はよく
読んでいますが)
友人というか人生の先輩にあたる方に
この本を頂いて読みました。
エッセーもなかなか良いものですね。
帯の顔写真もちょっとコワモテなので
(伊集院さんごめんなさい)
現代の大人たちへの叱咤がベースの
厳しめのエール。
ですがその奥に優しさを感じる文章です。
特に若者に向けての優しさが
(甘やかすのとは違う)
伝わってきます。
大人としての身嗜みの大切さ、
まず必要なのは体調。
体調を崩していては相手の方に失礼。
(体調管理に気をつけます)
そして、清潔さ。
伊集院氏が訪れる料理屋さんで
最初にチェックするのは
清潔さだそうです。
清潔、身綺麗は丁寧につながり、
丁寧は仕事の基本である、と。
これは飲食店だけではなく、
クリニックにも当てはまります。
もう一つ。
「さぞ苦しいだろうが、
君の今の苦しみはやがて
必ず君の力になる」
人間、底力が大切。
二十歳を過ぎれば
顔や表情にその人の人生が現れます。
それを見抜く力は
誰にだってあるのだと言っています。
これって、
『艱難汝を玉にする』
苦労は買ってでもしなさい、
というのと一緒ですよね。
わたくしも精進いたします。
(このあとしばらくエッセーにハマっています)
2011.06.07|コメント(0) | 院長の読書感想文
『心を整える』
久しぶりに読書感想文です。
すでにベストセラーに
ランキングされていますが、
出版早々に目に付いたので
第1刷を購入して読みました。
(先取りできた感じでちょっと自慢!?)
昨年のワールドカップ、
サッカー日本代表でキャプテンを
務めたMF長谷部選手。
決して派手なプレー(わたくしの目には)
というわけではありませんが、
ドイツで活躍している爽やかな選手ですね。
少し前のスポーツ誌『ナンバー』
で表紙を飾り、読書が好きということを
知っていたので手に取りました。
『心を整える』
長谷部誠 幻冬舎
27歳の若々しい文体で
とても読みやすい本です。
ワールドカップ前後の選手たちの心の動きなどを
垣間見ることができます。
それにしても
「意識して心を静める時間を作る」
この年齢で。。。スゴイ。
自分が27歳のときは??
かの貝原益軒も『養生訓』の中で
「夜書をよみ、人とかたるに
三更をかぎりとすべし」
と述べています。
「音楽の力を活用する」
長谷部選手はミスチルがエネルギー源に
なっているそうです。
わたくしも最近は就寝前30分ほど
音楽をかけて読書するように心掛けています。
なんとかこの習慣を続けようと思います。
2011.05.03|コメント(0) | 院長の読書感想文
ちょっと気楽に
このブログでご紹介しておりますように
唯一の趣味は読書です。
でも「お笑い」を見るのも
結構好きです。
基本的にコントよりも
コンビの漫才が好きです。
M1グランプリ終了は残念でした。
(チュートリアルやブラマヨあたりまでが
面白かったですね、個人的には)
日曜日夜7時テレビ愛知の
『モヤモヤさまぁ~ず』を
楽しみに観ています。
http://www.tv-tokyo.co.jp/samaazu2/
さまぁ~ずのゆるい感じが
日曜日の夜に合っています。
リラックスして
明日からまた頑張ろ!
って思います。
皆さまもよろしければ
今夜どうぞ。
きっとわたくしもテレビの前で
笑ってます。
2011.03.06|コメント(0) | 院長の読書感想文
『火天の城』と『いっしん虎徹』
最近更新していませんね、と
声をかけて頂き
ドキッとしながらも
嬉しく感じておりました。
昨年ご紹介した
『利休にたずねよ』の山本兼一氏が書いた
『火天の城』と『いっしん虎徹』。
それぞれ城大工と刀鍛冶が
主役の“職人”のストーリーです。
『火天の城』
山本兼一 文春文庫
織田信長の命により
安土城を築城する宮大工、
岡部又右衛門が主人公です。
安土城の名前を聞いたことはありますが、
実際にどのように建てられていたのか
資料はほとんどないのですね。
知りませんでした。
又右衛門の職人気質。
「職人の良い仕事ぶりを見るのは
面白くてたまらぬ。
見ていれば腹からいくらでも
力が湧いてくる」
医師の仕事にアカデミックな部分は
勿論大事ですが、
“職人”の部分は欠かせません。
ペインクリニックで行う
神経ブロックにも技術が必要です。
職人気質でなければ
上達できないと考えています。
それでいて総棟梁として
リーダーシップを発揮して
さまざまな分野の職人を
導く姿に惹かれます。
息子に向かっては
「腕を磨け、頭を働かせよ」と
諭します、
というより怒鳴ります。
「考えよ」というメッセージが
何度も出てきます。
父親に反発していた息子。
それが
「木を組むのが番匠の仕事で
人を組むのが棟梁の仕事」
と考えるように変化し、
成長していきます。
心を打たれた言葉。
嵐の夜に建築中の城を点検しながら
でも、何ら不安なく自信に満ちた
父親(総棟梁)に対して
若棟梁が、心配にならないのか、
と尋ねます。
総棟梁は答えます。
「若いころには気に病んだ。
だが、建ててしまったものは、
どうにもならぬ。
そのことに気づいてから、
わしは目の前の仕事で
決して手を抜かぬようにした。
それ以外になすべきことはない」
目の前の仕事で決して手を抜かない。
医療においてもその通りです。
いえ、すべての仕事において
そうであるべきです。
当たり前のことを当たり前に。
そして運命の本能寺へ。
『いっしん虎徹』
山本兼一 文春文庫
刀剣に興味はありませんが、
虎徹が新撰組・近藤勇の
愛刀だったことは
読んだことがあります。
虎徹が兜づくりから
刀鍛冶へと志し、
ひたすら修行していく姿。
心を打たれた言葉。
「仕事は、下手がよい」
という師匠のコトバ。
勿論、医者が下手ではいけません。
そのココロは。
常に現状に満足せず、
勉強しようという向上心。
昨日よりも今日、
今日よりも明日。
少しでも成長できるよう
努力致します。
2011.02.17|コメント(0) | 院長の読書感想文
『利休にたずねよ』
名古屋グランパス初優勝!
ストイコビッチ監督やりましたね!
ドラゴンズにグランパス。
今年は名古屋が頑張っています。
わたくし達も負けずに頑張ります。
今回は歴史小説です。
『利休にたずねよ』
山本兼一
PHP文芸文庫
第140回直木賞受賞作です。
そもそも
日本の最後のサムライと呼ばれる
山岡鉄舟の生涯を描いた
『命もいらず名もいらず』山本兼一
を読みたいなと思っていたところでした。
(これは文庫になったら読みます)
すると文庫版になった
『利休にたずねよ』を発見。
さらに映画化された
『火天の城』と一緒に購入しました。
千利休といえば
日本史やテレビドラマなどでしか
(恥ずかしながら)
知りませんでした。
史実とどれくらい重なるのかは知りませんが、
イメージがわきます。
面白い小説は頭の中で
映画のように思い描くことが出来ます。
茶会に数回招待されたことがあります。
まったくの素人であるわたくしは
緊張してオロオロするばかりでした。
そんなわたくしでも
この小説を読むと茶事というのは素敵だな、
なんて思います。
ココでは書くことができませんが
この小説には構造的な仕掛けがあります。
これもまた引き込まれて
続きがドンドン読みたくなる理由の一つです。
(その仕掛けは是非お読みになってください)
それにしても一つの道に
人生をかけることのカッコ良さ、
素晴らしさ、そして凄さを
思わずにはいられません。
わたくしは
ペインクリニックの道で
精進致します。
2010.11.22|コメント(0) | 院長の読書感想文